そういう戦いの演出はいけない。(ポリオワクチン接種に関することについて)
大阪では橋下知事が辞任するそうだが、神奈川では黒岩知事の初任者研修が終わらない。
ポリオの不活化ワクチン接種を独自に進めるとマスコミにぶち上げた神奈川県知事。厚生労働省の新薬承認が済んでいないワクチンを県立病院の医師による個人輸入という形で手に入れ、保健所で子ども達に接種すると言う。
従来のワクチンについては「危険だと分かっている生ワクチンを使えと県民に言えるか!」と、危険であるという認識を示し、安全な新薬の承認が進まない厚生労働省に対して怪気炎をあげて国と戦う姿勢を示した。しかし神奈川では年間8万人ほどの子ども達が接種を受けるポリオワクチン・・・こんな風にセンセーショナルに今のワクチンが危険だというような表現をされたら、おそらく大半の親はより安全なワクチンをわが子に接種しようと焦るにちがいない。そしてすでに従来のワクチンを接種した子どもの親にとってみれば“わが子は大丈夫か?”と不安に苛まれる。そういう余波を知事は分かっていて発言しているのだろうか?
実は従来から使ってきたポリオの生ワクチンには100万人に1.4人の確率で子どもがポリオに感染してしまうリスクがあることは近年指摘されており、この生ワクチンを子どもに接種させない保護者が出てきている。神奈川県ではこうした一部の要望に応えるため現在我が国が承認していない不活化ワクチンというワクチンを医師の個人輸入で手に入れて接種を促進しようという準備を進めていた。しかしその計画がリークのような形でマスコミに知れ、取材を受けた知事が厚生労働省の対応の遅れを指摘しながら県独自の導入を明言したのが今回の経緯。これに対して厚生労働大臣が「好ましくない。」と苦言を呈し、更に黒岩知事が応酬するという戦いの構図になってしまっている。
そういう戦いの演出はいけない。
安全なワクチンを子ども達に接種させたいという思いは私も知事も同じだと思う。だからこそこうした問題は粛々と迅速に準備を進め、大衆がパニックを起こさないように万全の体制を整えてから世に出すべきことで、知事のように発信力のある人がマスコミを利用するような発信方法は慎むべきではないかと考えている。まして自治体と国の意見が食い違い、戦っているような構図にするのは悪戯に国民を不安に陥れるだけであり間違いだと思う。
前述の通り年間8万人近い神奈川の子ども達の保護者の多くがこの未承認薬である不活化ワクチンを求めるようになったら医師の個人輸入などという方法で対応できるのか、はなはだ疑問である。実は一部の医療機関ですでにこの不活化ワクチンの個人輸入と接種を行なっているところがあるそうだが、すでに予約は満杯で問い合わせに答えきれないという話もあれば、この報道を見て従来のポリオワクチンの接種を取りやめた保護者が出てきている。
昨日の自民党政務調査会の議論もこの問題に終始したが、不活化ワクチンの導入を促進することについては異論は少ないだろう、しかし知事の発信する姿勢については太陽光同様にまたしても論議しなければならない。
不活化ポリオワクチンについて
生後間もない子ども達をポリオという病気から守るワクチンは一歳前後の日本の多くの子ども達に接種されている。現在我が国では「生ワクチン」と呼ばれる種のワクチンを使っているがこのワクチンの場合100万人に1.4人の割合でポリオに感染してしまうリスクがあることが分かっており、現在も国内では300人以上の患者がいる。そこで世界の先進国のほとんど全てが「不活化ワクチン」と言うポリオに感染しないワクチンに切り替えているが、日本ではいまだにこれができていない。どころかいまだに生ワクチンを使っているのはアフリカなどの後進国と日本だけというのが実態だ。厚生労働省ではこの不活化ワクチンの承認作業を急いでいるが承認されるのは早くとも来年度末になってしまうという。一方不活化ワクチンは未承認薬であり、医師が個人輸入して使用することはできるが、接種には5000円から6000円の費用負担が保護者に発生する。
不活化ポリオワクチンに関する情報は↓のページが参考になります。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~polio/vaccine.html