2023年09月02日

閑話休題 〜私は珈琲党〜

 毎日何杯のコーヒーを飲むだろうか・・。朝の寝覚めは近所のベトナムの人がいつもどっさりとくれるロブスタ種の豆を手動のミルでガリガリと挽いて、アルコールランプで沸かしたお湯でドリップするのが習慣です。そして仕事へ行き、事務所でブルックスの一杯19円のコーヒーをスタッフが淹れてくれたり、議会の控室ではポットにまとめて落としてあるコーヒーもすすります。県庁近くのベローチェに入って飲むこともあれば、事務所から海老名駅まで歩く途中スターバックスに立ち寄ることもあります。

 あ、ところで申し訳ありません。今日はタイトルの通り閑話でございますので、政治や行政とは一切関わりの無い話です。興味の無い方は、、ってみんな無いと思いますが、どうぞスルーしてしまって下さい。まあそれでも万が一「おお、珈琲の話題ならちょっと付き合ってみようか」という奇特な方がいらしゃいましたら、どうぞこの先もお付き合いください。

 それでもって、スターバックス。近頃の若者は何でも略して言うのでスタバなんて言いますが、ここのシャレたカウンターで私が頼むのは「エスプレッソ」。たいがいの場合若い店員さんは「エスプレッソですか?」と返してくる。そしてエスプレッソ〇〇とか〇〇〇エスプレッソと名の付くメニューを指さして「これではありませんか?」と。「いいえ、エスプレッソを」と私は親指と人差し指でCのマークを作る。つまり小さなカップ、これをデミタスカップと言いますが、それで苦いコーヒーの悪魔のような抽出液を注文します。きっとこんなものを注文する客はなかなか居ないのでしょう。やがて出て来るエスプレッソは日本酒を飲むぐい飲みの器よりも小さな決まって白いカップの、それも底の方に大さじ二杯分ほどの量の暗黒の液体をのぞかせています。たったこれっぽっちで400円。
 でも何かの本でだれかが・・「エスプレッソは飲み物ではなく、麻薬の一つだ」と書いていましたが、まあそれはちょっと大げさにしても、まずは席について店内を見渡してから目をつむり、小さなカップを鼻にあてて、このあまりにも芳ばしい香りを繰り返し吸い込んでいれば、ある種の麻薬じみた陶酔を感じる人がいてもおかしくはないと思うのです。つまり、エスプレッソは鼻で楽しむものだと、ここらでうんちくの一つも語りたくなる私です。
 ところで、今日は「珈琲党」とタイトルに書きましたが、決して珈琲通と書いたわけではありません。通と呼べるほど私は味や香りに通じているわけではなく、ただとにかく、今年のような熱い夏でもジュースやソーダのようなものには手を付けず、熱いコーヒーを毎日何杯も飲む左党だというわけです。そんな私がコーヒーを飲むようになったのは中学生の頃。ドイルだったかチャンドラーだったか、その小説の中に出て来る紳士がたしなむ珈琲のシーンに強い憧れをもちました。あるいはテレビドラマでコーヒーを飲む松田優作の格好良さにあこがれたか、とにかく「コーヒー=大人」というイメージに強く魅かれるものがあり、それは他の子どもたちが大人の真似をして格好をつけてタバコに手を出すのとほぼ変わらない動機であったと思います。それで、毎朝早起きの母がクリープをたっぷりと入れて、こっそりたしなんでいるネスカフェではなく、ちゃんと豆から淹れる珈琲を飲もうと、厚木のイトーヨーカ堂まで豆とドリッパーとペーパーフィルターを買いに行ったものです。赤いパッケージのUCCか、濃紺の渋いたたたずまいのKEYの豆をレジに持って行って「ファイングラインドで」と挽き方を注文する坊主頭の中学生を店員さんはどういう目で見ていたことでしょう・・。やがて趣味が高じてサイフォンを買って帰ったとき、高齢の祖母が「ギヤマンだ」と目を丸くした光景は今でも目に焼き付いています。
 まぁ、そんなわけでマセガキの頃からコーヒーを飲み珈琲にあこがれ続けて来た私です。世の中にファミリーレストランというものが流行り、「デニーズへようこそ」なんて言ってウエイトレスさんが差し出してくれるおしぼりとおかわり自由のコーヒーを砂糖もミルクも入れずに飲めるようになったのは、初めて失恋というものを知った大学生の頃だったか・・。そしていつしかそのファミレスのコーヒーが脂っこいパスタ料理などに合わせて深煎りのイタリアンになって行き、コンビニのコーヒーもまたマシーンの普及とともに苦味があって酸味の無い深煎りのコーヒーばかりになってしまいました。たしかに深煎りのコーヒーは後味がすっきりとして飲みやすいとは思います。でもそれとは逆に、浅く煎ったコーヒーは、挽いているときから上品な香りが立ち上がり、その酸味は飲み終えた舌に長く好香を漂わせ、それはそれで美味いものです。実は横浜の関内、ベイスターズ通りに夜はバーで昼間はこだわりの珈琲豆を集めて、淹れる店があるのですが、ここで飲ませる浅煎りのコロンビアは、今まで私が飲んだことが無い、まさにスペシャルティーな珈琲です。なんでも、生豆の醗酵段階でパッションフルーツとワイン酵母を漬け込んでいるのだとか。
 まあ、気が付けば長々と、閑話とは言ってもそんなにいつまでも長文に付き合わせるわけにもいきません。最後にそんな私が最近お薦めの一杯。近頃の若者はお薦めを「推し」なんて言うそうですが。そんなことはともかく、かなりはまっている(若者ははまることを沼と言う)コーヒーがラムコーヒー。これを知ったのは村上春樹さんのエッセーでしたが、ヨーロッパの寒い国で飲むラム入りのコーヒーは身体が温まって格別だと。細かく挽いて苦めに淹れたコーヒーにラム酒を大さじ一杯ほど(私はもうちょっと多め)それに砂糖を甘めに。基本はこれだけです。村上春樹氏の飲んだラム入りコーヒーはこれにホイップクリームが載ったり、バターを入れたりしていたそうですが、それはお好みということで、甘いラムの香りと珈琲の香りのコラボレーション。そして甘いラムと甘いコーヒーのトロッとした舌ざわり。是非寒い季節がやって来ましたらお試し下さい。長田進治でした。

posted by おさだ at 09:32| Comment(2) | TrackBack(0) | 日々雑感