2010年10月09日

秋雨

学生時代をすごした下宿は八王子の高尾という古びたまちの、浅川沿いの民家の一角を借りたものでした。

 家賃4万2千円、風呂無し、ボットン便所に雨漏りがしそうなトタン屋根。母屋からは当時流行りの4トラカセットでカラオケを熱唱する家主の歌声が絶え間無い部屋。
 ♪しゃれた日焼けに涙が流れる♪あぁ秋ですねぇ・・♪
 なんだか物悲しい演歌は曲名も知らないが、歌声は今でも鮮明によみがえる。

 まだ黒電話が主流のころ、パチンコ屋で稼いだ景品は、重たい受話器を乗せるとクルミ割り人形の曲が流れるオルゴール。電話を取り接ぐときに相手を退屈させないようにオルゴールが鳴るだけでけっこうシャレた計らいだと思えたし、部屋に電話の無い自分はそれに憧れていたから・・・

 念願の独り暮らし、入学から半年、バイトでためた金で部屋に電話を入れたのは今日みたいな冷たい雨の降る日。
 当時電話の加入権というのは確か7万円くらいして、それを不動産屋などで売り買いすることができた。売るときは4万円。なので大学を中退したやつから4万5千円で買ったのだ。

 自由にかけられる電話があればあんなことも・・こんなことも・・想像だけはめいっぱい広がってる独り暮らし・・
 “ツー”と鳴る受話器を確認して、実家に報告をしたら・・もうかける相手がいない。仲のいい友達も今日はバイト、あるいは電話を持ってない・・そもそも男どうしで何を話すんだ・・

 いや、本当は居た。どうしてもかけたい相手が。
 高校卒業以来会っていない女の子。やはり下宿の身、部屋の電話番号を書いた紙を渡してくれたが、まだかけたことは無かった。もう半年だ・・しかも北海道。まるで「北の国から」みたいな話だけれど。

 出るかどうか確かめるだけ、相手がでたら「まちがえました。」と切ってしまえばいい。元気ならそれで・・いい。そう言い訳して、決断のダイヤルを回したもの。

 プルルルル  プルルルル  わずか2コールで出てしまった彼女、「もしもし・・」としか言ってくれない・・これじゃ決めといたセリフが言えないじゃないか!

 しかし奇跡は起きるものである。

「あの・・」


「おさだ君?」

 まさに奇跡だ。

 彼女が語るには「カラオケの鳴る飲み屋から電話をしてくるような人っておさだ君しかいないから・・・」とか、大家の宮崎さんに感謝しなきゃいけないらしい・・
 遠距離ですし・・はかない片思いにはとりあえず決着が着くことになったわけですが・・

 あれもこれも欲しかった。何もかもが欲しい欲望。しかもあれもこれも値段が高かった・・だからこそ欲望も膨らむ。渇望の青春時代なのに冷たい雨の夜はそんな欲望も萎えたのが不思議だった・・

 そうそう・・あのオルゴール・・とうとういっぺんも使うことが無かった。だって独り暮らしじゃ電話を取り次ぐ必要なかったんだもの(涙)。

※ えー・・・読者の方からのご指導を頂き、一部文章を推敲致しました。
posted by おさだ at 19:32| Comment(2) | TrackBack(1) | 政治
この記事へのコメント
アホらしい
想像にまかせるなんて女性に失礼
Posted by さくら子 at 2010年10月11日 09:53
失礼でしたか・・すみません。
文章を推敲しなおしてみました。

最後まで読んでくれてありがとうございます。
Posted by おさだ at 2010年10月12日 07:06
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Tracked: 2010-10-13 15:35