2005年12月18日

シリーズ・県立高校改革 その2「競争時代の到来と入学選抜制度の問題点。」

 皆さんご存知の通り、昨年より県立高校の入学について「学区」というものが撤廃されました。神奈川県じゅうどこの学校へも行けるようになったのです。

 なぜでしょう?

この変化の根底にはこれまで「神奈川方式」といわれるほど徹底してきた「偏差値教育」への反省が込められている。と私は理解しています。

 私などもそのうちの一人ですが、中学3年生になって進学を検討するときその判断基準は通信簿などの内審点とちょっと昔ならこれにアテストの結果が加えられ、その点数の合計によって判断されて来ました。
 例えばいままでの海老名地区の学区は「厚木、海老名、愛甲郡」ですがその中に県立高校が10校ありましたので、「あなたの成績だと入れる学校はこれですよ。もし偏差値ランクがもう一つ上の学校を狙うなら滑り止めとして私立の併願が必要です。」なんて形で進路を決めていたものです。

 例えば40人のクラスのうち30人が県立高校への進学を希望するなら上から順番に成績を並べてトップの子数名が厚木高校で次が、海老名、次がというランク付け進路指導というのが現実でした。でもこれって・・・・実に残酷なことですよね。ランク(=偏差値)の低い学校に行かざるを得なかった子にとってそれは下手をすれば生涯に渡るコンプレックスとなりかねないものでした。

 そこで神奈川県はこの何年かの間、各高校になにかしらの「特色」を持たせる取り組みを行なってきました。近い例で言えば厚木北高校にスポーツ学科を設置。厚木南高校をフレキシブルタイム制の学校に。座間高校はスーパーサイエンスハイスクールを目指して徹底的に理数系の教育を充実。ひばりが丘高校は英語を。総合高校などと言うのも人気をはくしました・・・etc・・

 そして子どもたちが偏差値で志望校を選ぶのではなく、「私はこれがやりたい。」という目標によって学校を選べる環境を作った(作ろうとした)のです。となった以上、「僕はスポーツをやりたいから厚木北に行く。でも学区が違うから行けない。」という状況を生まないためにも県内の学区は撤廃されたのです。

 県下の県立高校が互いに特色を競いあう良い意味での競争時代に入ったのです。


 そして更に県は入学試験を前期と後期の二回に分けました。前期試験はチャレンジです。筆記試験を行なわず、中学校の内審点と部活での成績、ボランティア活動、そして面接や作文による「生徒自身のアピール」で採用を決めることとしたのです。素晴らしい取り組みだと私は思います。そして後期試験はこれまでの通り筆記試験。

 ただ第一回目の選抜方法導入となった昨年、予期せぬ(!?)大問題が発生してしまいました。それは・・・・実はこれに先駆けて中学校の学校現場では内審点、つまり通信簿の評価に絶対評価という制度を導入しておりました。これは従来ならば五段階で1から5までの点数を付けるにあたって5の割合は何パーセント、4の割合は・・・というように割合が決められていたルールを無くして、教師の判断でその割合を変えることができる。つまり上から順番にランク分けする相対評価では無い絶対評価の方法としたのです。
 これが入試となる前期試験において問題となったのです。というのは、県内のある市ではこの絶対評価を極めて甘く付けたのです。例えば美術などにおいては生徒のほとんどが最高の“5”が付いているような状態。生徒が入試の際に「得するように。」という思惑があったかどうかは断定できませんが・・・その結果県内でも有数のある進学校ではその甘くつけた市の生徒が合格者の大半を占め、となりの市の子どもは数名しか受からなかった。という信じられないような不合理が生じたのです。生徒が受からなかった市の教員たちはこれまで通りできる子には5を、中くらいの子には3を、と評価していたから・・・・

 この問題にはその進学校の姿勢も問われるべきだと私は感じました。県下の教育が偏差値教育から脱して行こうと工夫を凝らして努力しているときに、チャレンジであるはずの前期試験で面接も行なわずに絶対評価(内審点)が高い子から機械的に合格させてしまうというやり方をしたのだから・・・・

 より良い教育を実現するために制度を変える努力をしなければなりません。しかし、制度が変わるハザマに居合わせた生徒は思いがけない損、泣いても泣ききれないような不公平を被ってしまう危険を関係者は改めて思い知らされました。
 
 そして今、二度目の春に向けて中学校では進路指導が始まっています。私のところにも保護者の方から相談が来ています。その多くは制度変化に対する戸惑いと不安を含んでいます。中学の現場教師が新しい制度をあからさまに批判することもあるようです。批判する者はきっと従前の偏差値教育のことも批判していたのでしょうけれど。

 変化のハザマで生徒が犠牲にならないよう、充分な対策を講ずることができず、昨年のような問題を引き起こした県教委の責任は問われるべきでしょう。しかし、より良い教育の実現のために歩み始めた改革の歩を止めてはいけません。

 次回に続く・・・・「県立高校100校計画の成果と失敗」
posted by おさだ at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) |
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